
注文住宅について調べていると、「上棟」という言葉を耳にすることがあります。しかし、専門用語の多い建築業界の言葉はわかりにくく、「上棟って何のこと?」「上棟式はしたほうがいいの?」などさまざまな疑問が出てくることも多いでしょう。
そこでこの記事では、上棟の意味や上棟式の流れ、準備や費用について分かりやすく解説します。家づくりをスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
上棟とは?上棟式はした方がいい?

そもそも、上棟とはどういった状態のことを指すのでしょうか。ここでは、意味に加えて上棟式の必要性について、詳しく見ていきましょう。
上棟とは
上棟(じょうとう)とは、家づくりの過程で柱や梁といった主要な骨組みが組み上がり、小屋の頂部にある「棟木(むなぎ)」を取り付ける作業のことを指します。
地域によっては「棟上げ(むねあげ)」や「建前(たてまえ)」などとも呼ばれます。
上棟は、主に木造軸組工法の住宅で用いられる言葉ですが、鉄骨造などでも構造体が完成した段階を「上棟」と呼ぶ場合があります。
なお、上棟という言葉が指すタイミングは地域や建築会社によって多少差があり、柱や梁を組み終えることを「上棟」とすることもあれば、屋根の施工が終わった段階を指すこともあります。
上棟式はした方がいい?
上棟日には、上棟式を行うことがあります。上棟式とは、これまでの工事が安全に進んだことへの感謝と、竣工まで無事に工事が進むことを願う意味が込められた儀式のことです。
地鎮祭が神主を招いて行う神事であるのに対して、上棟式は棟梁(大工の代表)が中心となって執り行うのが一般的です。
近年では、費用や準備の負担を考慮して、行わなかったり簡略化したりするケースも珍しくありません。一方で、上棟式は施主と職人が親睦を深める良いきっかけになるため、執り行う方もいます。
上棟式をするかは施主の自由ですが、感謝の気持ちを伝える場として活用すれば、家づくりをより温かい思い出にできるでしょう。
上棟式の流れ・準備・費用

上棟式の進め方は地域の風習や建築会社によって大きく異なるため、ここでは一般的な式の流れと必要な準備、費用について説明します。
上棟式の流れ
上棟式は、以下のような流れで進みます。
- 棟梁が棟木に幣串(へいぐし)と呼ばれる安全を願う飾りをつける
- 祭壇に御幣やお供え物を飾る
- 施主と棟梁が、家の四隅に酒・塩・米をまいて建物をお清めする
- 工事の安全と無事を祈って、二礼・二拍手・一礼を行う
- 施主の挨拶のあと、全員で乾杯する
- 棟梁や工事関係者が順に挨拶をする
- 地域によっては、餅や小銭、お菓子などをまく「餅まき」を行う場合もある
- 最後に手締めをして式を締めくくる
- 施主から棟梁や職人へ、ご祝儀や引き出物を渡して感謝を伝える
近年では、神主を呼ばずに施主と工事関係者だけで簡素に行ったり、お弁当と飲み物の差し入れのみで済ませたりするケースも増えています。
どのような形式にするかは、予算や希望にあわせて建築会社と相談しましょう。
上棟式の準備
上棟式の準備は、建築会社が一部手配してくれる場合もありますが、主に以下を準備します。
- 棟札(むなふだ)……棟木に取り付ける札
- 御幣(ごへい)……紙垂や扇子、水引などで飾られた神事で使用する供え物
- お供え物……祭壇に並べる米・酒・果物・野菜など
- 軽食や飲み物……弁当やお菓子、飲み物
- ご祝儀・引き出物……職人さんや関係者への感謝として渡す
飲み物は、ビールなどのアルコールに加え、お茶やソフトドリンクなども用意しましょう。ご祝儀や引き出物ののし紙には「御祝」「上棟祝い」「祝上棟」などの表書きをし、施主名を添えるのが一般的です。
上棟式にかかる費用
上棟式にかかる費用の目安は、全体でおよそ10〜15万円前後、内容によっては30万円程度になることもあります。ただし、地域の慣習や建築会社の方針にもよるため、事前に相談しておきましょう。
- お供え物……約1万円
- 飲食物(弁当・お菓子・飲み物など)……1人あたり2,000〜3,000円程度
- ご祝儀……棟梁へ1〜3万円、職人1人あたり3,000〜1万円、現場監督へ1万円前後
上記はあくまで目安とし、無理のない範囲で感謝の気持ちを表すことが大切です。
上棟に関してよくある質問

上棟についてよくある質問をまとめました。ここでは、以下の3つの質問に回答します。
- 上棟してから完成までどれくらいかかりますか?
- 上棟を見に行くならどの時間帯がベストですか?
- 雨の場合でも上棟式は行いますか?
家づくりをスムーズに進めるためにも、1つずつ見ていきましょう。
上棟してから完成までどれくらいかかりますか?
建物の規模によって異なりますが、木造住宅の場合、上棟から完成までの期間は3カ月から4カ月程度です。
上棟が終わってからは、屋根工事、外壁工事、内装工事と進んでいきます。その間、電気配線や給排水設備などの設備工事も並行して行われます。天候不良や資材の入荷遅れなどがあれば、予定よりも長くかかることもあるでしょう。
詳細な完成時期を知りたい場合は、工事工程表を確認したり、建築会社に進捗を確認するのがおすすめです。余裕をもったスケジュールを立てておくことで、引っ越しの準備や手続きも、スムーズに進められるでしょう。
家づくりの流れについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
関連記事:家づくりの流れ|大工産
上棟を見に行くならどの時間帯がベストですか?
上棟を見学する場合は、午前中の早い時間帯か、棟木を取り付ける午後の時間帯がおすすめです。午前中は柱や梁を組み立てる作業が見られ、建物が徐々に立ち上がっていく様子を自分の目で確かめられるのが醍醐味です。
ただし、現場では多くの職人さんが作業をしているため、邪魔にならないようにすることが大切です。事前に建築会社に見学できる時間帯を確認し、安全な場所から見学しましょう。また、写真撮影は作業の妨げにならない程度にして、職人さんへの感謝の言葉も忘れずに伝えましょう。
雨の場合でも上棟式は行いますか?
上棟は、少しの雨であれば予定通り実施されることが多いです。ただし、大雨や豪雨、台風などの荒天が予想される場合は、安全面を最優先して延期することがあります。
クレーンを使った高所作業もあるため、無理に進めると事故の危険が高まるためです。
雨だと「木材が雨に濡れてしまうけど大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、構造体に使われる材木は乾燥されているため、再度乾かせば問題ありません。
上棟など家づくりに関することは建築会社に相談しよう

上棟は、家づくりの中でも節目となる大切なタイミングです。上棟式を行うかどうかは自由ですが、これまでの工事の安全に感謝し、関係者へのねぎらいを伝える良い機会にもなります。
式の内容や準備、費用は、地域の風習や建築会社によって異なるため、事前に相談しながら無理のない形で進めることが大切です。家づくりでは、自分たちの家の建築に携わった人たちとのつながりを感じながら、完成までの過程を楽しんでいきましょう。

